毎週日曜日、8時過ぎに単身赴任先の自宅に戻る。
失礼かもしれないが、本当に何もない町だ。24時間やっているコンビニはもちろん、大型のスーパーもない。服屋は個人で経営する商店のようなところしかない。ヤマザキショップはあるが、日によって閉まる時刻が違うらしい。しかも、それこそ何でも売っている。面積は広い町だが、小学校は3校、中学校は1校しかない。信号機は学区に1つしかない。
家族のいる街は、割と栄えている。歩いて5分のところにコンビニ3つ、ユニクロと大手スーパー、カワチもある。病院も内科に皮膚科、眼科、歯科、整形外科に精神科等々なんでもある。かなり住みやすい。
何にもない町と、何でもある街。どちらがいいか、正直、家族の住む本当の自宅だ。
でも、勤務先の町に来て、初めて見たものがある。どんなに栄えている街でも絶対にないものだ。
それがまた、美しいものなのだ。
それは、街では見られない、満天の星空だ。
写真でも撮れないくらい遠くに輝く空一面の星たち。本当に神秘的だ。空にはこんなにたくさんの星があるんだなということがここに来て初めて分かった。
今日もそんな神秘的な星空を見た。
何でもあるからこそ見えにくいものってあるんだなということ、逆に、何にもないからこそ見えてくるものもあるんだなと思う。
関係ないかもしれないが、ここに、金子みすヾさんの『星とたんぽぽ』を紹介する。
星とたんぽぽ
金子みすヾ青いお空のそこふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまでしずんでる、
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
ちってすがれたたんぽぽの、
かわらのすきにだァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
夜でも星が見えない街もある。
雪深くて、根だけでなく、たんぽぽの花もなかなか見えない町もある。
どっちもいい。どっちも見たい。でも、同時には見えない。だから、いろんなところに行って、いろんなことを感じることが大切なんだなぁと改めて思う。